大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

宇都宮地方裁判所 昭和56年(ワ)141号 判決

原告

舟橋良子

ほか一名

被告

石川進

主文

一  被告は、原告舟橋良子に対し、金二一八万二、二三〇円、原告舟橋勲に対し、金一四万七、一五五円及び右各金員に対する昭和五六年三月三一日から完済に至るまで年五分の金員を支払え。

二  原告両名のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の、その一を原告両名の各負担とする。

四  この判決は、第一項にかぎり、かりに執行することができる。

事実

第一当事者の申立

一  原告両名

(1)  被告は、原告舟橋良子に対し、金四六二万五、三五五円及び内金四三二万五、三五五円に対する昭和五六年三月三一日から完済に至るまで年五分の金員を、また、原告舟橋勲に対し、金二三万一、六五〇円及び内金二〇万一、六五〇円に対する右同日から完済に至るまで年五分の金員を支払え。

(2)  訴訟費用被告の負担。

(3)  仮執行宣言。

二  被告

(1)  請求棄却。

(2)  訴訟費用原告両名の負担。

第二請求原因

一  事故の発生

原告舟橋良子は、昭和五四年三月二四日午後八時二五分頃原告舟橋勲所有の普通乗用自動車(栃五五ぬ三三五四号)を運転して宇都宮市一条四丁目地内の南北に通じる国道一一九号線(以下南北路という。)を花房三丁目方面に向けて南進し、同所一番一六号の地点で右南北路と西方へ通じる道路とがT字に交わり、かつ、信号機による交通整理の行われている交差点に差しかかり、T字路を右折西進しようとして該交差点に進入したところ、該交差点内において、南北路を花房三丁目方面(南方)から北進し該交差点に進入直進して来た被告運転の普通乗用自動車(栃五六ら第八六三六号)に衝突され、これにより上顎右中切歯・下顎右中切歯の歯牙破折、上顎左中切歯・上顎右側切歯の歯牙脱臼、上顎左中切歯・右中切歯・右側切歯の歯肉損傷の傷害を負い、また、原告勲所有の自動車はその前部左側が大破損壊した。

二  責任原因

被告は、前記加害車の所有者で自ら運転したのであるから、その保有者として自賠法三条により原告良子の被つた損害の賠償義務があり、また、被告には後記のとおり本件事故発生につき過失があるから、不法行為者として民法七〇九条により原告勲の被つた損害の賠償義務がある。すなわち、被告は、前記交差点を北方へ直進するのであるから、前方を注視して交通信号に従い、該交差点を右折しようとしている対向車両があるときには、これに衝突することのないようハンドル及びブレーキ操作を確実に実行して徐行あるいは場合により停止して安全運転をなすべき注意義務があり、かつまた、南北路は別紙図面のとおり、被告の進行方向である北行き車線がT字路の南側で二車線であるが北側では一車線となるところ、被告はこれを知つていたのであるから、その走行車線である中央寄りの車線より進路を変更して第一車線を走行して対向車線との衝突を避けるべき注意義務があるのに、これらを怠り、前方注視をせず、その結果停止信号を見過し、かつ、慢然減速もしないまま直進した過失により、折から右事故地点を対向南進し、右折を開始した右原告車の左前部に自車の右前部を激突させ、本件事故を惹起したのであるから、民法第七〇九条により、原告勲に生じた物的損害を賠償すべき義務がある。

三  原告両名の損害

(1)  原告良子の損害合計金四八六万七二、九五円。

(一) 治療費金四九万七、〇〇〇円。

同原告は、前記傷害を負い、昭和五四年三月二五日と翌二六日の二日間福田歯科医院(宇都宮市大和二丁目一〇の二二)に、同年四月七日から同年六月二日までのうち六日間岡本歯科診療所(栃木県河内郡河内町中岡本二四一二)に、同年七月六日から同年一〇月八日までのうち一〇日間青木歯科医院(宇都宮市西二丁目二の四)にいずれも通院して、福田歯科医院に金五、〇〇〇円、岡本歯科診療所に金二四万五、〇〇〇円、青木歯科医院に金二四万七、〇〇〇円を支払つた。

(二) 休業損害金九四万八、〇九〇円。

原告良子は、本件事故当時三一歳(昭和二三年二月二六日生)の家庭の主婦であつたので、昭和五二年賃金センサスによる女子三一歳の年収金一七二万三、八〇〇円の少なくとも一〇%増額分が昭和五四年度の年収であると考えて、金一八九万六、一八〇円をその基準とし、同原告が右事故による傷害の結果、働くことの出来なかつた同年三月末から同年九月末まで六箇月間の休業損害は金九四万八、〇九〇円となる。

(三) 逸失利益金一九二万二、二〇五円

原告良子は、本件事故当時三一歳の健康体であつたから、昭和五四年三月二四日以後六七歳まで三六年間は就労可能であるというべきところ、本件事故のため、原告は後遺障害等級別表第一四級に該当する傷害を受け、その労働能力喪失率は百分の五であつて、昭和五二年賃金センサスを基準としてその少なくとも一〇%増加分が昭和五四年の年収であると考えて金一八九万六、一八〇円を基準とし、新ホフマン式により中間利息を控除すると逸失利益の現価は左のとおりとなる。

1,896,180×20.2745×5/100=1,922,205

(四) 慰藉料金一〇〇〇万円。

原告良子の肉体的、精神的苦痛及び後遺症の発生等を考慮すれば右の金額をもつて相当とする。

(五) 弁護士費用金五〇万円(着手金二〇万円を支払つたほか、成功報酬金三〇万円。)。

以上(一)ないし(五)の合計金四八六万七、二九五円が原告良子の被つた損害である。

(2)  原告勲の損害合計金二三万一、六五〇円。

(一)物損金一八万一、六五〇円。

本件交通事故の被害車両は同原告の所有であつたところ、原告車の左前部が大破するなどし、その修繕費は金一八万一、六五〇円であり、同原告はこれと同額の損害を受けた。

(二) 弁護士費用金五万円(着手金二万円を支払つたほか、成功報酬金三万円。)。

以上(一)(二)の合計金二三万一、六五〇円が原告勲の被つた損害である。

四  損害の充当

原告良子は、自賠責保険金二四万一、九四〇円を受領したので、前記損害金四八六万七、二九五円からこれを控除すると残金四六二万五、三五五円となる。

五  結論

よつて、原告良子は、被告に対し、金四六二万五、三五五円及びこのうち弁護士費用中の成功報酬金三〇万円を控除した金四三二万五、三五五円に対する昭和五六年三月三一日(訴状送達の日の翌日)から完済に至るまで民法所定の年五分の遅延損害金、また、原告勲は被告に対し、金二三万一、六五〇円及びこのうち弁護士費用中の成功報酬金三万円を控除した金二〇万一、六五〇円に対する右同日から完済に至るまで民法所定の年五分の遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

第三請求原因に対する認否

一  請求原因一の事実中、原告良子の傷害の部位程度及び原告勲所有の自動車の破損の状況程度を除くその余の事実は認めるが、右傷害及び自動車破損の点は争う。

二  請求原因二の事実中、被告がその所有の普通乗用自動車を運転して原告両名主張の年月日時にその主張の場所で原告両名主張の普通乗用車と衝突したことは認めるが、その余の事実は争う。被告は青信号を確認して本件T字路交差点に進入して直進したところ、対向して進行してきた原告良子運転の原告車が被告車の直前で右折したので、被告において急ブレーキをかけたが間に合わず、本件事故が発生した。

三  請求原因三の事実は争う。

四  請求原因四の事実は認める。

第四抗弁

一  過失相殺

前記第三の二で述べたように、本件事件発生については、原告良子にも前方不注視と直進車である被告車の直前での右折という過失があつたから、損害額の算定につき斟酌されるべきである。

二  弁済

被告は、原告良子に対し、治療費金一、五〇〇円、通院交通費金八、〇〇〇円、合計金九、五〇〇円を支払ずみである。

第五抗弁に対する認否

抗弁一及び二の事実は争う。

第六証拠関係〔略〕

理由

請求原因一の事実(事故の発生)中、原告良子の傷害の部位程度及び原告勲所有の自動車の破損の状況程度を除くその余の事実については本件各当事者間に争いがなく、右争いのある事実については、成立に争いのない乙第四号証、原告舟橋良子本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる甲第二、第四、第七号証、第一二ないし第一七号証、第一九、第二〇号証(第一五ないし第一七号証、第一九、第二〇号証については原告両名主張どおりの写真であることが認められる。)により、これを認めることができる。

請求原因二の事実(責任原因)中、被告が加害者の所有者で自ら運転していたことについては原告良子と被告との間に争いがないから、被告は自賠法三条にいう加害車の保有者として、原告良子に対し、同原告の被つた損害を賠償する義務がある。

また、前掲甲第一五ないし第一七号証、乙第四号証、成立に争いのない甲第一号証、乙第二、第三号証、第五ないし第八号証、甲第一八号証(第一八号証については、被告本人尋問の結果により原告両名主張どおりの写真であると認められる。)、原告舟橋良子、被告各本人尋問の結果(ただし、被告本人尋問の結果中後記信用しない部分を除く。)を合わせ考えると、つぎの事実が認められる。

原告良子は、事故当時前記南北路(制限速度時速四〇キロメートル)を南進して事故地点であるT字路交差点に差しかかつた。別紙図面(以下図面という。)のとおり、南北路はT字となつた交差点を基準として、これにより北方側が南行き三車線北行き一車線であり、南方側が南行き北行きともに二車線であるところ、原告良子は、T字路を右折西進するため、南行き三車線のうち一番道路中央寄りの車線を走行し、交差点の手前約五〇メートルの地点において右折の合図を出し、該交差点内にいた同じく右折西進しようとして対向車の通過を待つ二台の先行自動車を見て、その二台の自動車のさらに後方で、かつ、停止線の一・一メートルほど手前の地点(図面〈ア〉)でいつたん停止した。そのとき見た信号が青から黄・右折可の矢印に変り、右二台の先行車も走り出したので、これについて発進して交差点内に進入し、ついで、信号が黄色・右折可の矢印から赤・右折可の矢印に変り、これを現認して図面〈イ〉の地点から時速約二〇キロメートルで右折を開始し、ハンドルを右に切りながら進行したが、その時点では南方の注視をせず、したがつて対向車の有無を確認しなかつた。そして、図面〈ア〉の地点から約七・二メートル進んだ地点(図面〈ウ〉)で、原告車後部座席にいて対向して来た被告車を見て危険を感じた原告勲が「止れ」と大声で叫んだので、対向車線を見ると、南方から交差点に進入直進して来た被告車を認めたので、あわてて急ブレーキをかけたが間に合わず、〈ウ〉の地点からさらに三・四メートル進んだ地点(図面〈×〉、交差点北側中央辺)で、原告車左前部と被告車右前部とが衝突した。一方被告は、南北路を時速四〇キロメートルで北進してT字路交差点に差しかかつた。しかして、その走行する北行き二車線のうち中央寄りの車線を走行して交差点を直進通過すべく、交差点南側入口停止線の手前約一二メートルの地点(図面〈1〉)で信号を見たところ青であり、そのとき交差点北側入口停止線辺りに停止中の原告車を認めた(そのときの原告車の右停止地点につき、原告良子本人は図面〈ア〉と指示し、被告本人は図面と指示するが、いずれであるにせよ、〈ア〉と図面〈イ〉との距離が三・八メートルであるところ、はその中間にあるから、その位置と距離に照らして、本件においていずれであつても差したる影響はない。)。そして、被告は、そのままの速度で走行したが、交差点から北方側は北行き一車線となるので、〈1〉の地点から約一二・七メートル進んだ辺り(図面〈2〉)で中央寄り車線(第二車線)から西側寄り車線(第一車線)へ進路変更しようと思い、自車進路の左後方走行車両の有無に気を配り、たまたま、左後方走行車が被告走行車線に近寄つて来るように見えたので、それに気をとられ、〈1〉の地点通過以後は信号を全く確認せず、かつ、減速をもしないで同一速度のまま進行し、〈2〉の地点からさらに約一三メートル進行した地点(図面〈3〉)で前方約一四・一メートルの地点(図面)に右折中の原告車を見て初めて危険を感じ、急ブレーキをかけたが間に合わず、右〈3〉の地点からさらに約一一・九メートル進んだ地点(図面〈×〉)で原告車と衝突した。以上のとおり認めることができ、これに反する被告本人尋問の結果は、前掲各証拠と対比して信用できない。

しかして、前掲乙第二、第四号証(実況見分調書、原告良子の司法警察員に対する供述調書)により、原告良子の事故時の現場における警察官に対する指示説明、事故二日後における供述のいずれもが具体的明確であると認められることに照らし、かつ、原告舟橋良子本人尋問の結果を合わせ考えると、原告良子の〈ア〉の地点と〈イ〉の地点直前での信号の確認についての供述部分は措信することができるところ、前段認定の諸事実と前掲乙第三号証とを合わせ考えると、原告車が〈ア〉の地点にいるとき信号が第一現示(乙第三号証中の信号機の現示秒数表)である青から青・黄色右折可に変つたのであるから、被告が信号を確認し、かつ初めて〈ア〉の地点にいる原告車を認めて〈1〉の地点を通過した直後に北行きの信号は黄色となり、そのさらに四秒後には第二現示(前同表)の北行き赤となつたはずであり、そして被告車の速度が時速約四〇キロメートルであつたのであるから、四秒間には約四四・四〇メートル走行でき、被告は黄色信号中に交差点に進入したと認定できる。右認定に反する原告舟橋良子本人尋問の結果は容易に信用できない。

以上の認定事実によれば、原被告車は、いずれもほぼ同時に交差点内に進入したものであるところ、原告良子には信号に従つて右折を開始したが、対向する直進車の有無、その動静への注視確認義務あるのにこれを怠つた過失があり、他方被告には〈1〉の地点での信号確認をしたのみで、それ以後の信号確認を怠り、かつ、前方にいる右折車への注視確認と前記状況のもとにおける減速義務(せいぜい時速三〇キロメートル前後を相当とする。)など安全運転義務があるのにこれらを怠つた過失があり、本件事故は、右双方の過失により発生したというべく、その割合は、原告良子三、被告七と認めるのを相当とする。ゆえに、被告は、原告勲に対し、不法行為者として民法七〇九条により損害賠償義務がある。

請求原因三の事実(原告両名の損害)について検討する。

原告良子の損害について。

〈1〉原告舟橋良子本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる甲第二ないし第一三号証によると、原告良子が治療費として原告主張どおり各歯科医院に通院し、その主張どおりの治療を受け、少なくともその主張どおり合計金四九万七、〇〇〇円を要したことが認められる。また、〈2〉右各証拠によると、原告良子は、昭和二三年二月二六日生れの事故当時三一歳の健康体の持主でその夫である原告勲・長男・二男・勲の母以上五人家族の家庭の主婦として家事労働に従事するかたわら、原告勲の経営する家庭電気製品販売業の集金・売込みなど多少の手伝いをしていたが、事故後四箇月間位家業の手伝いができず、家事労働にはそれ程の支障がなかつたが、通院の手間や歯の痛みのため十分には従事できなかつたことが認められるところ、これによる休業損害は、他に特別の立証のない本件では、基本的には労働省統計情報部作成の賃金センサスを基準とするのを相当とし、事故当時の昭和五四年度のそれによれば、全国性別年齢階級別平均賃金の年齢階級三〇歳から三四歳(女子)のそれは月間きまつて支給する現金給与額金一二万二、九〇〇円、年間賞与・その他特別給与額金三九万七、七〇〇円、以上特別給与を含めた月間平均給与額は金一五万六、〇〇〇円(年間金一八七万二、〇〇〇円)であり、原告良子が十分稼働できなかつた四箇月分は金六二万四、〇〇〇円となり、前認定の諸事情を考慮してその稼働能力の三分の一を減弱したものと認めるのを相当とすると、休業損害として金二〇万八、〇〇〇円となる。〈3〉原告良子が昭和二三年二月二六日生れで事故当時三一歳の健康体の持主であつたことは前記のとおりであるから、事故後三二年間は就労し得るというべきところ、原告本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる甲第七号証によると、前記歯の傷害は昭和五四年一〇月八日治癒したと認められ、後遺障害等級別表一四級に該当する(その労働能力喪失率一〇〇分の五)というべきところ、原告舟橋良子本人尋問の結果によると、現に原告良子が負傷した前歯を常に気にして奥歯でものを噛むため奥歯が年中痛んでは歯医者に通つていることが認められ、以上によれば、今後の労働能力が引続き稼働可能期間中減弱したままの状況にあると考えられるところ、前述の昭和五四年度の年収賃金一八七万二、〇〇〇円を基準とし、ホフマン式計算法により中間利息を控除して現在一時に請求し得る金額は、

187万2000×18.8060×5/100=176万0242

で金一七六万〇、二四二円となる。〈4〉慰藉料は金一〇〇万円をもつて相当とする。〈5〉弁護士費用は金二五万円(着手金、成功報酬)を相当とする。以上〈1〉ないし〈5〉の合計金三七一万五、二四二円が原告良子の損害である。

つぎに、原告勲の損害については、原告舟橋良子本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一四号証によれば、〈1〉本件事故により破損した原告勲所有の原告車の修理代金一八万一、六五〇円を要し、同原告がこれと同額の損害を被つたことが認められ、また、〈2〉弁護士費用として金二万円(着手金、成功報酬)を相当とするから、右〈1〉〈2〉の合計金二〇万一、六五〇円が原告勲の損害である。

つぎに被告の抗弁について判断する。

過失相殺の抗弁については、前認定のとおり、本件事故の発生については、原告良子にも三割の過失があるから、原告両名の損害はこの限度で減額されるべきである。よつて、原告良子の損害前記金三七一万五、二四二円から弁護士費用金二五万円を過失相殺の対象から控除した金三四六万五、二四二円につき三割を減じて金二四二万五、六七〇円となり、原告勲の損害前記金二〇万一、六五〇円から弁護士費用金二万円を過失相殺の対象から控除した金一八万一、六五〇円につき三割を減じて金一二万七、一五五円となる。

しかして、請求原因四の事実(原告良子が自賠責保険金二四万一、九四〇円を受領したこと)については、同原告と被告との間に争いがないから、これを同原告の損害前記金二四二万五、六七〇円から控除すると金二一八万三、七三〇円となる。

弁済の抗弁について。

原告舟橋良子及び被告各本人尋問の結果によると、被告が本件事故原告良子に治療費の一部として金一、五〇〇円、通院交通費として金八、〇〇〇円を支弁したことが認められるところ、通院交通費については、原告良子において本訴請求から除外していること及びこれに右各本人尋問の結果を合わせ考慮すると、右当事者間において原告良子の実際に要した交通費金八、〇〇〇円を被告が支弁したが、これを訴訟外で処理し、審判の対象としない趣旨に出たものと認めるのが相当であるので、右交通費支弁についての抗弁は理由がなく、治療費金一、五〇〇円についてのみ抗弁は理由があるから、これを原告良子の損害から控除すべきものとする。ゆえに、原告良子の損害は前記過失相殺し、かつ、保険金を充当減額した金二一八万三、七三〇円から金一、五〇〇円を控除して二一八万二、二三〇円となる。叙上により、結局原告良子の損害は右金二一八万二、二三〇円に前記弁護士費用金二五万円を加算した金二四三万二、二三〇円であり、原告勲のそれは過失相殺後の金一二万七、一五五円に前記弁護士費用金二万円を加算した金一四万七、一五五円である。

以上により、被告は、原告良子に対し二四三万二、二三〇円、原告勲に対し金一四万七、一五五円及び右各金員に対する昭和五六年三月三一日(訴状送達の日の翌日)から右完済に至るまで民法所定の年五分の遅延損害金の支払義務があり、原告両名の各請求は右の限度で認容するが(原告両名は、弁護士費用中着手金を除いた成功報酬については遅延損害金の支払を求めていないが、本件口頭弁論終結時において未だ原告代理人が現実に受領していない成功報酬相当額の損害についても訴状送達後は遅延損害金の付帯請求をし得ると解するのを相当とするところ、当裁判所の右認容額が遅延損害金の付帯請求をしていない原告両名の請求金額の範囲内であるから、成功報酬を含めた認容額全額につき遅延損害金請求を認めて差支えないものと解する。)、その余の請求は理由がないから棄却すべきものとする。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 菅本宣太郎)

別紙 交通事故現場見取図

〈省略〉

信号機の現示秒数(その1)

〈省略〉

信号機の現示(その2)

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例